2017/10/23

『国宝展』 於:京都国立博物館 part.1

photo : tana


平日ならば人はそれほど多くないだろう、と思っていましたが、それも誤算。おそらく、人が少ない時はないと思ってもいいでしょう。金曜日の夕方4時前くらいに行きました。その時は待ち時間もなく、スムーズに入れました。金土は夜8時まで開いているので夕方入ったんですが、夜は人が少ないというセオリー通りには行きませんでした。

Ⅰ期からⅣ期にわたって展示替えがされるので、出品表にあっても展示されていない作品の方が多いです。わたしが行った時はⅡ期目。

photo : tana

3階から下に行く道順。それはいいのですが、最初に見る書籍は作品番号が150番台で、出品表をひっくり返して番号を探すはめになりました。このルートにそってお気に入りの作品をピックアップして語っていきます。



書籍

書籍Ⅱ期には空海の書が多めです。字の良し悪しは見るけれど、基本的にあまり興味がないので、最初の部屋ということで人も多いし、さくっと通り過ぎました。空海であろうとも、宸翰(天皇の直筆)であろうとも、ふんふんと見て通り過ぎました。

分かりやすそうな《古今和歌集》の和歌などはⅠ期でもう過ぎてしまいました。書籍はⅢ期が良さそうですね。《御堂関白記》《日本書紀》《日本霊異記》が見ることが出来ます。藤原定家の《源氏物語奥入》も。10月31日~11月5日の1週間限定で《今昔物語集》が展示されます。



考古

次の考古は180番から200番台。番号が飛びすぎで、また探しました。もうちょっと番号か展示順、考えてほしかった…。まぁ、それは置いといて、縄文土器としては超有名、教科書でも写真でもテレビでも誰もが見たことがある、火焔土器と縄文の土偶たち3体そろって見ることができました。



《深鉢形土器 (火焔型土器) No.1》 前3500~前2500年
新潟県十日町市

深鉢形土器が正式名称のようですね。そして、1つだけと思っていたら、No.1からNo.6まであるらしいです。教科書で見たのはNo.1のはずだと思っていますが。書籍はⅢ期が良いと書きましたが、火焔土器はⅢ期だけ展示がありません。

土偶ちゃんたちもよかったですね。土器もだけど、なんでこんなフォルムになったのだろうという疑問が、見るほどにふつふつと浮き上がってきます。

完品で出土したのか、組み合わせたのか知りませんが、よく完全体で展示できるようなものが出てきたな、と思って、それだけでもすごいことです。改めて本物を見てみて、土器も土偶も好きだな、って感じました。



仏画

番号は1番から13番。3部屋目で出品表の最初。仏画もⅢ・Ⅳ期の方がいいですね。東寺伝来の《両界曼荼羅図》が見られます。すごい迫力の大きなものなので、見たこと無い方は必見ですね、と仏画好きは思います。



《阿弥陀二十五菩薩来迎図 (早来迎)》 14世紀 知恩院

迎えに来てもらっていたのは徳の高そうなお坊さんでした。まだ死ぬ時じゃないけど阿弥陀様御一行様お迎えに来てくださるのは、お坊さんとしては最高の瞬間であることでしょう。早来迎って要するに早死になんじゃ、と思ったわたしは悟りには程遠い存在です。



《釈迦金棺出現図》 11世紀 京都国立博物館

とても珍しい図のようです。涅槃に入った釈迦が、母マーヤの嘆きを鎮めるために、棺から起き上がって説法したという図です。キリストの復活のようですね。そういう話が釈迦にもあったのを初めて知りました。



六道と地獄

ちょっと怖い絵が続くので、さらっと流しました。地獄絵より《餓鬼草紙》の方が怖い感じです。30番前辺りの番号が「六道と地獄」で、Ⅲ・Ⅳ期は同じ部屋で「肖像画」になります。



肖像画

Ⅲ・Ⅳ期で《伝平重盛像・伝源頼朝像・伝藤原光能像》がそろって展示されます。神護寺の三像、23年ぶりに揃うそうです。割りとどうでもいい情報。



中世絵画

10月22日まで雪舟の国宝6作品がすべて揃うという謳い文句も、知ってはいたが狙って行った訳ではないですが、ちょうど見ることが出来ました。《四季山水図》は巻物で、人集りの後ろからはちょっと見にくいです。Ⅲ・Ⅳ期に雪舟は無く、大衆的にはあまり有名ではないですが、如拙の《瓢鮎図》が見られます。



《秋冬山水図》 15世紀 東京国立博物館

左が秋で、右が冬の図です。《慧可断臂図》もいいですが、気になると言ったら《秋冬山水図》です。秋冬と言いながら冬の方が有名で、秋があったんだ、というくらいの認識でした。だけどやはり冬の方がドラマチックでいいですね。

いつも不思議に思うのは、冬の中心の一本線。その線の右が岩なのか、左が山なのか、あるいは逆なのか、あるいはどちらでもないのか。普通に考えれば、右が岩なのだと思いますが、変な形の岩で、お寺を潰してしまいそうに覆いかぶさっていて、見ていて落ち着きません。けれど、真ん中にその線があることで、とても壮大でドラマチックに見えます。

そういう冬に比べて秋は平凡なので、あまり目立たないのだと思います。



近世絵画

狩野派、長谷川等伯、尾形光琳など、中世に比べると有名な作家を全期に渡って見ることが出来ます。俵屋宗達《風神雷神図屏風》はⅡ期まで。Ⅲ期には長谷川等伯《松林図屏風》、Ⅳ期には尾形光琳《燕子花図屏風》と、有名所が満載です。いつ行っても楽しめる近世絵画です。



《風俗図屏風(彦根屏風)》 17世紀 彦根城博物館

わたしはこの絵がとても好きです。Ⅱ期だけの展示で、本当に見ることが出来てよかったと思います。井伊家伝来の江戸時代の風俗を描いた屏風ですが、人物の配置、描写、色彩、そういうものがすべてすばらしい技術とセンスで描かれていると思います。線も滑らかできれい。髪の毛がとても柔らかそうです。特に後ろ姿の女性がとても色っぽいです。

背があまり高くない屏風で、座って鑑賞する、あるいは、寝ている時の目隠し、そういう役割だと想像しました。何でも1つ貰えるなら、これが欲しいです^^



中国絵画

中国で描かれたものが日本に贈られ(または買われて)、長く伝来してきたものが、国宝となる。不思議な縁ですが、本国中国にも残っていない作例ならば、日本で大切に伝え残すことに、とても大きな意味があります。

日本の水墨画に比べると、より力強く、あるいはより柔らかく、日本の水墨画の基礎であることが感じられます。



《飛青磁花生》 中国 14世紀 東洋陶磁美術館

どこから見ても美しい青磁の花入れです。わたしは白磁より青磁の方が好きですね。あの微妙な色合いが好みです。サビの色も形も無造作な感じで良いです。

中国絵画のところに陶磁があるように、近世絵画のところに志野茶碗《卯花墻》がありました。Ⅲ期から展示される大井戸茶碗《喜左衛門》は中世絵画のところに展示されるのだと思います。

青磁の花入れだけではなく、壺や茶碗など丸いものでも、正面が無さそうな立体アートでも、必ず正面というものはあると思っています。花だって、一番きれいに見える顔があるのです。どこでもいい、というのは、顔がない、のっぺらぼうと同じではないかと感じます。

展示されているものであれば、キャプションがある所から見る所がその陶器の正面であると考えます。《飛青磁花入》の高台には、線で結ぶと十字になるような、丸い点のサビが4点あります。それで、「どこから見ても美しく見えるよう計算されて入れられたサビ」(内容はうろ覚えの要約)とキャプションにあるので、となると、今正面のように見えている正面は、その通り正面なのだろうか、と見ていてすごく気になりました。

どこでもいいっちゃいいですことなんですが、気になったんです。高台に1ヶ所、欠けなのか手の後みたいな釉薬の凹みがあったので、そこを後ろにして正面を決めたということも考えられるし、まぁそういうことだろうと思いつつ、気になるので、展示した人に聞けるのなら聞いてみたいなとは思いましたが、自分で想定したこともある程度は間違っちゃいないだろうと結局その時は聞かなかったのですが…。1階に続く…。



Blogを書くために探してきて貼った画像は東洋陶磁美術館のものです。そして国宝展でもこの通りに展示されていたので、所蔵博物館で展示されている通りの方法で展示されているようです。公式的な正面が「ここ」らしいです。



展示方法が気になる、というのは、やっぱり大学で勉強していたからですかね。あとは茶道でお茶碗を扱っていたせいでしょうか。変な所が気になるのは性格だと思います。



Part.2へ続きます。長くなってしまいました。



photo : tana

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